沼田まほかる、「ユリゴコロ」衝動と言う名の病
随分前に読んだのだが、あまりにも印象的で正直なところ気持ちの悪い小説だったので、紹介してみようと思います。
今まで読んできた中でも上位で気味の悪い小説になっています。
どんな内容なのか?
ある日主人公は家の中から「ユリゴコロ」と書かれたノートを見つける。
そこには殺人衝動に取り憑かれた人間の殺人の告白が書かれていた。
読んでいて終始暗い物語だなと感じました。
突然見つけた「ユリゴコロ」をきっかけに、主人公は混乱に陥って行くのである。
話の進み方は、割と単純であり、「ユリゴコロ」を読んでしまった主人公とそこに書かれている殺人の告白文、そして、それによって主人公が少しずつ踏み込んではいけない領域へと誘われていくといった内容になっています。
不気味で気持ちの悪い小説ではありましたが、しっかりとしたミステリーであり、読みごたえもあって、とても面白かったです。
「ユリゴコロ」とは?
タイトルである「ユリゴコロ」とは、何なのだろうか?
「ユリゴコロ」とは、「拠り所の聞き間違え」という解釈をしている方もいるそうです。しかし、はっきりとしたものではなく、読者によって様々な解釈が出来る意味合いを持っているのだと思います。
読者がこの小説を読んだ後、「ユリゴコロ」とは何だったのだろか?
そう考えさせるのも小説を読む魅力の1つではないだろうか。
殺人衝動と優しさ
殺人衝動に駆られるというのは、どのような状態なのだろうか?
世の中には変わった人がいっぱいいるが、殺人を犯したくなる衝動というのは、簡単に理解できることではない。
この物語に出てくる人物は、決して悪意から人を殺しているのではない。
殺人衝動が抑えられないというのは、1種の病気なのである。
しかし、それが許されるはずもないのである。
人間としての心を持っているが、ただどうしても抗う事の出来ない衝動に襲われるのである。
その上で、人間としての優しい気持ちを持ち合わせていることがまた難しいのである。
最後に
しっかりとしたミステリーであり、物語もしっかりとして最初から最後まで見ごたえのある1冊になっていたと思いました。
物語の奇妙さや怖さは、小説を面白くしているいいエッセンスになってて、決して悪い意味ではなく、読むのを躊躇ってしまうような物語でした。
是非、手に取ってみてはいかがでしょうか?
映画化もされているので、絶対に面白い作品です!