恩田陸 小説「木漏れ日に泳ぐ魚」 感想
数々の賞を取っている恩田陸さんの作品ということで今回手に取って見ました。
読んでみて思ったのが、なかなか珍しいタイプの小説だと感じました。
ミステリーであるが、物語の中で繰り広げられる人物にほとんど動きがないのである。
普通どんなミステリーであっても、事件が起きて、様々な人物像が浮かび上がり、思いもよらない結末に至るというのがミステリーであると思うのですが、この小説は2人の語りによって様々な真実が解き明かされていくのである。
物語は、アパートの一室から始まり、その一室内で完結する話である。
2人の人物による語りによって、事件が紐解かれていき、過去の記憶のすれ違いや親の死など、語りの中で明らかにされていく本当の真実。
その中で、2人は思いもよらぬ、結末を迎えるのである。
この小説の魅力は、何と言ってもアパートの一室で繰り広げられる2人の心理戦である。
男女2人で生活しているのにカップルではないという関係性も不思議であり、そんな2人が別々で暮らすことになったその夜に語り合っているのである。
互いに心理戦を繰り広げて行く中で紐解かれていく真実はどのようなものなのか、気になって一気に読んでしまいました。
たくさんの賞を受賞している恩田陸さんの作品なのではずれはないと思っていましたが、やっぱり面白い作品でした。
是非手に取ってみてください。